この記事は家族の体験談です。病気や介護の状況は人によって違います。体の痛み、歩行困難、強いだるさなどがある場合は、自己判断せず医師や専門職に相談してください。
もう亡くなってしまった父親のことを、今でも思い出すことがあります。父はリウマチで、体が思うように動きませんでした。車から降りるのも遅い。歩くのも遅い。何かをするたびに時間がかかる。
こちらは親より20歳以上若いわけです。自分は普通に動ける。だから、親の動きの遅さを待っていると、どうしてもイライラしてしまうことがありました。
待たされていると思うと、口調に出る
親が車から降りるのに時間がかかる。支度に時間がかかる。歩くのが遅い。そういう場面で、こちらはつい「早くしてくれ」と思ってしまいます。
そして、それが口調に出ます。きつい言い方になる。やつあたりのようになる。本人は体が動かないだけなのに、こちらが勝手に待たされている気持ちになって、早くしろという空気を出してしまう。
今になって思うと、それは本当に申し訳なかったと思います。体が動かない人に、早くしろと言ってもどうにもなりません。本人が一番つらかったはずです。
体に良いと思って連れて行った温泉で、逆に動けなくなった
特に覚えているのが、父を温泉に連れて行った時のことです。体に良いだろうと思って、奈良の方にある名湯 入之波温泉山鳩湯へ連れて行きました。かなり強い温泉で、効き目が強かったのだと思います。
ところが、その温泉が効きすぎたのか、父がほとんど動けなくなってしまいました。体を良くするために連れて行ったのに、逆に動けなくなってしまった。まさに本末転倒です。
その時に、自分は「なんで動かれへんねん」というような言い方をしてしまった記憶があります。今思い返すと、体が動かなくなって困っていたのは父の方です。こちらが怒るようなことではありませんでした。
親の遅さではなく、自分の余裕のなさだった
親の動きが遅いと、こちらはイライラします。でも、よく考えると、それは親の問題だけではありません。こちらに余裕がないのです。
時間ぎりぎりに出る。早く終わらせたいと思う。自分のペースで動かしたいと思う。そういうこちら側の都合が、親の遅さにぶつかってイライラになるのだと思います。
親はわざと遅くしているわけではありません。痛い、動かない、怖い、転びたくない。そういう中で、必死に動いているだけです。
親が動いている間に、自分が別のことをする
では、どうすればよかったのか。今なら、親が動いている間に、自分が別のことをすればよかったと思います。
- 車から降りる間に荷物を整理する
- 会計や受付の準備をしておく
- 次に必要なものを先に出しておく
- スマホを見るのではなく、親が安全に動ける場所を作る
- 最初から予定に余裕を持たせる
親の動きを速くするのではなく、こちらの動きを変える。待たされている時間ではなく、準備する時間に変える。そうすれば、イライラはかなり減ったのではないかと思います。
今、親の遅さにイライラしている人へ
もし今、動きの遅い親にイライラしている人がいるなら、少しだけ立ち止まってほしいです。その親は、好きで遅く動いているわけではないかもしれません。体が痛い、怖い、力が入らない、転びたくない。そういう理由で、ゆっくりしか動けないのかもしれません。
自分も、その場では分かっていませんでした。父が亡くなってから、あの時もっと待てばよかった、もっと余裕を持てばよかったと思うことがあります。
親の体は、ある日急に若返るわけではありません。動きは遅くなります。できないことも増えます。だからこそ、こちらが少しだけ先に準備する。少しだけ時間を多めに見る。少しだけ口調を柔らかくする。それだけで、親も自分も楽になるのではないかと思います。
体が動かない人に、早くしろは通じない
体が動かない人に、早くしろと言っても動けません。むしろ焦らせて、転倒やけがにつながるかもしれません。
親の動きが遅いとき、本当に変えるべきなのは親の速度ではなく、自分の予定と心の持ち方だったのだと思います。これは、父を見送ったあとに残った、自分の反省です。
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